第9章 あの花畑で[△不死川実弥]
「お前にこの娘の見張りを任せる」
そう言って親父が連れてきたのは、まだ10くらいの子供だった。
子供には子供の見張りが妥当だろうと連れてこられた。
見張り。
逃げる素振りを見せたら足を折れ。
それでも逃げるようならば目を。
そう教えられてきた。
俺たちが仕えているのは、代々鬼に贄を捧げる一族だった。
毎年のように誰かが贄になっている。
そして、誰かが贄となれば、その弔いとして祭りが行われる。
狂った一族だ。
鬼に脅えて、家族を差し出すなんて気が狂ってる。
この子供もそうだ。
普通親と離れることになれば泣くものの。
泣くどころか表情一つ変えない。
恨まれる前に渡してきたのか、
それとも、愛のひとつも与えずに育ててきたのか。
俺が今まで見張ってきた贄は、1年で捧げられた。
どうせこの子供もすぐに捧げられる。
そう思った。
「家事とかは俺がやるので」
「そう……」
子供の割には落ち着きすぎている。
もしかしたら10ではない?
「失礼ですが、御年齢は?」
「……13」
「13…」
「この背丈ですものね、勘違いするのも無理ないわ。
別に貴方も敬語でなくていいのよ。
どうせ歳は近いだろうし」
「いえ、そうはいきません」
「なら命令よ。主の命令。
あと2年よろしくね、実弥」
そう言って、初めて表情を変えた。
ん?あと2年?