第6章 霞と微風[☆時透無一郎]
部屋中に鳴り響くアラームを止め、まだ眠っている彼を揺さぶる。
「ほら、起きて」
「…………あと5分」
「それ3回目」
そう言うと、ノソノソと動き始めたが、丸まった体制で止まるものだから布団を剥ぎ取った。
布団があるからいけないんだ。
「僕の布団が……」
「起きないと遅刻するよ」
「……はい」
ナマケモノなみに遅い動きでベットから降りた。
それじゃあ遅刻すると思ったから、無一郎を押して洗面所に行かせ、顔を洗わせてタオルで拭いた。
着替えを渡し、無一郎が着替えている間に朝食の準備をする。着替え終わったのを見計らって迎えに行き、今度は腕を引っ張ってリビングまで連れていく。
ご飯を食べさせ、髪を櫛で梳かし、口の周りに着いたパンカスをティッシュで取る。
「大人なんだから綺麗に食べなって」
「……お母さん」
「誰がお母さんだ。ほら、歯磨いておいで」
洗面所に行ったのを見計らい、お皿を洗ってお弁当を袋に詰める。
「無一郎、私もう出るね」
「あ、うん。ちょっと待って」
私が出ると言うと、急いで歯磨きを終わらせ、洗面所から出てきた。その速さを最初から出して欲しいものだ。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
玄関の扉を開けると、雲ひとつない青空が広がっていた。
今日も頑張ろう。