第3章 復讐の糸[☆童磨]
ジャラっと鎖の音が塀の中に響く。
極楽教の施設の地下牢に、彼女は閉じ込められていた。
上弦の弐との戦いに敗れ、鬼の気まぐれで生かされ、
刀も隊服も取り上げられ、まるで囚人のような服装をさせられ、
足に鎖を付けられていた。
自身の鎹鴉は、戦っている最中に鬼によって殺された。
なので誰も、彼女の居場所が分からなかった。
鼻歌が聞こえ、誰が来たのかはすぐにわかった。
牢の鍵を開け、鼻歌の主はニコニコしながら入ってきた。
「気分はどう?」
「……………………」
「もーまたご飯食べてないの?
人間は直ぐに死ぬんだから、食べてもらわないと困るよ」
鬼は箸をとり、食べ物を掬って彼女の口に当てた。
彼女はそれを叩き捨て、鬼を睨んだ。
「いつまで反抗するの?無意味なのに。」
「……………なぜ私を生かしている。
喰うなら喰え。殺すなら殺せ。」
「まだそんなこと言ってるの?俺は君を愛してるから生かしてるんだ。喰うだなんて……そんな事できっこないよ!」
目を潤ませながらそういう鬼に、彼女は鼻で笑った。
「ずっと思ってたけど、お前感情ないだろ。
泣いてるのも嘘泣きだ。
そんな奴が"愛してる"?ハッ、人間馬鹿にすんのもいい加減にしろよ。
それにもし本当に愛していたとしても、お前なんかに愛されて嬉しいはずがないだろ。
分かったらとっとと殺せ」
鬼は彼女の首に爪を当てた。
その顔は感情を帯びてなく、冷たいという一言で表すのには十分だった。
「冷たい事を言うんだね君。
君こそ今のこの状況分かってる?
刀1本持ってない君なんか、すぐに殺せるんだよ?」
「だったら殺せ。どの道鬼殺隊でも私はとっくに死んだとされているから。」
「面白いなぁ君は。ますます生かしたくなる。
じゃあこうしよう。俺の一日の仕事が終わったら、俺の御奉仕をする」
こいつの頭の中はナメクジが住み着いているらしい。
彼女はそう思った。
「キモイんだよお前。さっさと死ねよ」
「じゃ!また今日の夜中来るねぇ!
あ、寝ててもいいよ!勝手にしとくから!」
逃げようにも足に鎖が着いているから逃げられない。
地下だから太陽の光なんてもちろん来ない。
(………早く死にたい)
そう思い、目を瞑った。