第4章 理由
「それからの行動は『間諜』としてだのいくらでも理由は着く」
「一寸待て。以前手前に会ったときは、ハッキリと戻らねえって断ってたじゃねえか」
頭が少し混乱している中也。
ああ、そんな事ーーー、紬は詰まらなそうに考える。
「首領は最初から『治』の事しか云ってないのだよ」
「!」
「その話題を出すことで『私にそろそろ戻るように』圧力をかけていたに過ぎない」
紬は少し考える。
「そして、社員一人の移籍の提案を条件に出したーーー……」
「……真逆とは思うけど」
「……。」
しばしの無言。
「凡てはこの戦いのために、だよ中也」
「……そうかよ。」
そんなに昔からこの日のためにマフィアに戻ることを考えていたのか、と嘘だと疑うことは難しくない。
しかし、本当なのだろう。
唯一無二の兄から離れることを選択するほどに状況は善くないーー………
「にしても森さんは中也や姐さんにも云ってなかったのだねえ」
「……首領も戻ってこないと思ってたんじゃねえの?」
「ああ……その可能性もあったのか。……うん、まあそうだよね」
中也の言葉に妙に納得する紬。
「そういや手前、太宰の居場所は知ってンのかよ」
「……そうだね。恐らくだけど」
「何処に居やがる」
「治なら軍警に捕まった」
「は?」
「今までやって来た事を考えるとその辺の収容施設に収監なんかされない。それを含めて考えるならばーーー」
ぶつぶつ云い始めた紬に「?」の符号を頭上に浮かべている中也。
「確信持てる情報になったら中也にも教えてあげるよ」
「否、別にいい。知ったところでどうせ録な事にしかならねェ」
即答する中也に、紬は漸く笑ったのだった。