第2章 蝶を夢む
ザザッと云うノイズ音。恐らく電波が届きにくい場所にでも移動したのだろう。
『莫迦に………ザッ……マフィ……優秀…兄貴』
思っていた以上にノイズ音が酷い。先程の戦闘で不工合が出たか、或いはーー
紬は思考を巡らせる。
『ヤバ…連中………命……下はたら……ザッ』
ガバッ!
「うぉっ!?何だァ?急に!!」
寝そべっていた上半身を起こし、機械に手を添える紬。
「シッ……!」
「!」
『………た……ら……』
「中也、銀ちゃんの側にいる『た』から始まって『ら』で終わる名前の男ーーー検討つくかい?」
「あ?『立原』じゃねえか?黒蜥蜴のメンバーだ」
「それだ」
「?何がだよ」
険しい顔をしている紬とは反対に、突然訊かれた名前の意味を理解できない中也。
成る程……私達と接点がなく、そして安吾の後釜としてマフィアに居たから、調べても引っ掛からずに、全く気付くことが出来なかったわけだーーー
「何て?」
「何も云ってない」
「なんなんだよ、全く」
「取り敢えず、私は寝る。着いたら起こして」
「はァ?!おい、気になるだろうが!」
その後何度呼び掛けても無視を決め込む紬であった。