第1章 アリア
「ヴィクトル!!」
「わぁーお!どうしたんだい?、今日はやけに積極的だね?」
誰もが寝静まった深夜、私はヴィクトルの部屋に訪れて布団の上から彼に覆いかぶさった。
灯りの消した部屋には、月明かりがぼんやりと部屋に差し込んでいるだけ。
ヴィクトルの驚きを含めた柔らかな嬉しげな声が耳をくすぐるようだった。
湖のように澄んだ水色の瞳は、深海のように紺碧色に染まり、瞳を細めて私を見つめていた。
「···、?」
この言い表せない感情を、どうやって処理していいのかわからなかった。
布団をぎゅっと握った手に、ぽたぽたと垂れたのは私の涙だ。
「···、最近、勇利とばかりでちっとも構ってくれないんだもの。ヴィクトル···、こんなに、こんなに大好きなのにっ」
「···、片時だって君の事を忘れたことは無いさ。今日は一緒に寝ようか」
ヴィクトルの腕が私に伸びて、大きな手が頬を撫でて親指の腹で涙を優しく拭い、髪を耳にかけた。