第3章 前日譚3:貴方の覚悟は凪のように
《AnotherStory》闇夜の太陽:前日譚3
3(1/1)/5P┃ドリノベ版05/09P┃0850字
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
それからどのくらい時が経ったのか、柔らかく耳に届くのはコラさんの寝息と電伝虫が鳴いている音色。
うつらうつらしてたが、音と共に「おい、コラさん!!コラさん起きろ!!」と、ローくんの怒鳴り声がして、ガス!!と言う衝撃にゆれたの後の「いてェ!!」と言うコラさんの叫び声でハッキリと目が覚めた。
(……………………………あ!!)
「ん…………………………………!!??」
「なにしてんだよ!!離せ!!」
起き抜けでまだよく働いていない頭と目。それでも目が点になりながら大きく見開き、開いた口が締まらない様子のコラさんは、私とローくんを交互に見ている。
「なんだよ、その顔!!」
「だって、え、」
「あー………その、コラさんが離してくれなかったのでそのまま……」
「………………!!ご、ごめんなさい!!」
とっさに土下座するコラさん。その彼を蹴りながら怒り心頭のローくん。焦る私。
「いえ!いいんです、違うんです!私………私が先に抱きしめたんです!」
コラさんを引っ張りながら頭を上げさせて、顔が近づいて視線が合うと、カァァァとまるで少女漫画みたいに頬が熱くなってしまう。
「や、そうか、ごめん。え、ん…………? お前、今『コラさん』て…………」
「うるせェ!黙れこのセクハラ野郎!!」
ボカ!!ガス!!ドスッ!!と暴力的な音と共にローくんにボコボコにされるコラさん。
恐らく今はなにを言っても聞く耳がないみたいなので、仕方がないからこの流れを見守ることにして───『これもある種の照れ隠しと二人のコミュニケーションかもしれない』とプラス思考に考えてみる。
(大体【昨夜のコラさんの涙と言葉に心を開いたローくん】なんて感動的なすごく大切なシーンだったのに、起きたらそのコラさんは部外者の女と抱き合って寝ていたのだから、ショックが大きくてもおかしくない)
このローくんまだ年端もいかない少年なのだから、もしかしたらあれだってラブシーンに映ったかもしれないのだ。彼が怒るのもムリはないだろう。
(………本当にごめんなさい、ローくん)
ふいに鳴き続けていた伝電虫が目に入った。
