第2章 白猟【白煙の向こう側】後日談あり
我が上司のスモーカーさんは………辞表も別れ話も、表情を変えることなく淡々と受け入れてくれた。話した内容は『田舎の家族の具合が悪い』とのありふれた理由。
(うそくさい話だけど、真偽を確かめる術もないから便利な[理由]だよね?)
そうして、彼の部屋の私物を片付けて、残りの期間をただ消化するだけの日々を過ごす。
有給休暇をしている時に自分のベッドで普通に目覚めたら、そこにあったもの。
持てないくらいに大きな赤いバラの花束。
「え………?」
目の前のバラに気を取られていると、ピンっとした音と共に何かが降ってきたので反射的に受けとると、それはダイヤモンドの付いた指輪。
「え……………?」
(え?え?え?なにこれ?)
寝起きで、起きたことにも処理できない頭と顔で、放心しながら指輪の元を見ると、スモーカーさんが立ち上がってこちらに来た。
(スモーカーさん?バラの花束?指輪?)