第2章 白猟【白煙の向こう側】後日談あり
「妊娠3ヶ月だね」
「あ“あ“あ“…やっぱり……あ、ありがとうございました」
暗い表情を隠せずに廊下に出て、診察室の扉を静かにパタンと閉める。
この[マリンフォード]には一応〈軍人向け〉と〈家族向け〉の病院があって、私が今いるのは〈軍人向け病院〉だ。そこで最近の不調を診てもらった次第。
(はぁ…………………………)
穏やかだったはずの二人の関係に変化が訪れたのは『避妊しているのに私が妊娠した』時。
スモーカーさんは[結婚]をしてくれようとしてるけれども───私は[別れの時]だとずっと思って……覚悟していた。
(彼はまだ30代…今からでも十分大丈夫)
恋愛結婚主義ではないけど、スモーカーさんの結婚は『恋愛結婚か政略結婚』が良いと感じている。私が相手ではそれはどちらも当て嵌まらない。
(彼に『責任』で結婚させてはダメ……)
『堕胎』と言う選択肢は初めから無かった。
だって私はスモーカーさんのことがなんだかんだと、今でも大好きなんだから。
その人の子供を宿せたのに『産まない』と選択するのは愚かだろう。海軍はきっと辞めることになるけれども。
(一人でも育てていける。……大丈夫)