第1章 ベポ【初恋の行くすえ】
………なのに負けた。
イヌアラシ公爵もネコマムシの旦那も。
王様を二人ともひどい目にあわせて、はりつけにするだけじゃ飽きたらずに、国中に強力な吸うだけで危険な毒ガスがばら蒔かれて全滅まで時間の問題だった。
もちろんワタシも。家族も。
その時に現れた救世主[ぐるわらの一味]
と一緒に、あり得ないほどのボロボロの体で動いていたその勇姿が──朦朧として死にかけたワタシの『最後の風景』の中に。
(ベポ………やっぱりカッコいい……!)
『最後にベポが見れてよかった』と、素直に思えた気持ちはあたたかくて、ふしぎと死ぬのも全然怖くなかったのを覚えている。
『すき!惚れなおしちゃう。最後にイイものを見せてくれてありがとう神様!』と覚悟していたのだけれども──
ワタシは生き延びた。
[ぐるわらの一味]にすごい名医とガスに精通してるヒト?がいたらしくて滅亡寸前だった[モコモ公国]のミンク族はみんなで助かったそう。
(外のヒトたちもベポたちもスゴい!)
『大人になった姿も凛々しくてシビれる』とメロメロしてしまうほどにステキに成長してるベポだけど、幼かった彼は『もう帰って来ない』んだとワタシもみんなも思ってて、ワタシの『ツガイになる相手』がペボからもう違う、他の年が近いクマになっていた。
だけど、いちいちキザでナルシストで自己中な彼をワタシはあんまりスキじゃない。
だからってわけじゃないけれど。
(でも………でもでもでもでもっ!!)
(あんなにカッコよくて、優しい人はなかなかいないよね。しかもシロクマ!!)
(強気なのに弱気なとこも変わってない)
(やっぱり………ワタシはベポがスキ)
「ベポがいいな……ううん、ベポじゃなきゃイヤ」
姿や声や空気、勇気や優しさ………すっかりベポへの恋心を取り戻してしまったワタシなので、ひそかにある計画を立てる。
(こんな生涯一度のビッグチャンス、絶対にのがしちゃダメ!のがしたら後悔する!!)