第4章 《1部/前編3/5話/3P》07 08 09
〈第1章 子供時代編〉【09 私がだした答え】
〈03/10話│3(1/2)/3P│1500字〉
────────────────────
日常は変わらなく過ぎていく。例えサンジがいなくても。
同じように訓練をして、同じようにご飯を食べて、同じように眠る。なにも変わらないのだけれど、ただどのシーンにもサンジだけがおらずに、ダイニングからもリビングからも[3]のイスがなくなった。
ただ、サンジに会えないだけ。
(やっぱりサンジが作ってくれた色んなご飯の方が温かくて美味しいなぁ……)
日常には、もういない、だけ。
なんだかんだで半年が過ぎたある日───イチジに向かうみんなが連れられる形で牢獄がある棟に行った。
毎晩こっそりと私が一人で通っている場所。
牢の中にはマスクヘルメットを被らされて顔が分からなくなっている子供──サンジがいる。
兄弟達は『サンジは死んでいない』との事実がやっと分かったのだろう。今やっとサンジの状況を認識して、新しいネタで彼を蔑んだり馬鹿にしたりしていた。
なのに。
それらを少しも歯牙に掛けないで、サンジは久しぶりに見る私をずっと凝視している。
「……にいさま……」
つぶやいた声にピクッと反応したと思ったら、マスクからキラリと光る雫が落ちていく。
多分それは薄暗い牢の中だから夜目が利く私にしか分からなかったかも知れない。現にみんなは相変わらずサンジをネタにゲラゲラと笑って暴言を吐いているだけだったから。
(あ───マズイマズイマズイ)
鉄格子の向こう側でマスクを被っていて表情が分からないサンジだけれど、私を見ている彼がどんなことを悲しんでいるのかが手に取るように分かってしまう。
(恐らくきっと───『私に自由に会えない』とか『一緒になにもできない』や『慰めたり励ます』のができないことを悲しんでいる……で当たってるかな)
これら反応を見て調べるために、しばらくサンジに私の姿を見せなかった。