第3章 《1部/前編2/5話/3P》04 05 06
〈子供時代編〉【05 未来の一流シェフ】
〈02/10話│2(2/2)/3P│1500字〉
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「でもいままでは、さわってもべつになにもなかったんだよ?」
「イチジ達みたいに鍛練してるからじゃ?」
「そっかあ……」
力の目覚め。
確かに一緒に鍛練してる兄達はそれぞれに特殊な能力の片鱗を時たま感じさせていた。
それが私の場合は治癒能力。
(父の………[ジェルマの戦士]としては対して戦力にならない力だけど、私は人を傷つけずにすむ。むしろ人を助けることができる[力]だったのを、なにに感謝すればいいんだろう。よかった。本当に良かった…)
気づいたらボロボロと滝のように泣いていて、サンジに優しく頭を撫でられている。
「そうだ!ちょっと待ってろ」
テーブルの上に乗せてあった、ご飯みたいな物体を持ってきて、笑顔で差し出してくれた。
「はじめて作ったんだ!一緒に食べよう」
すごくびっくりして涙なんて止まってしまう。
「うそ……は、はじめて……?」
ポカンと呆気にとられてサンジを見たら、照れくさそうにコクリとひとつうなづく。
「ああ!さっき、キッチンで作ってみたんだ。ほら、まだあったかいだろ」
サンジの初めての料理。
記念すべき[アレ]を私にも食べさせてくれるのがすごくすご─く嬉しくて、笑顔で「いただきます!」とスプーンを受け取り口へと運ぶ。
「おいしい!」
「ほ、ほんとに……?」
「うん!とってもおいしい!」
味自体は、子供が作った見た目に反差ない。
だけれどそれ以上にサンジの優しさが嬉しくて、笑顔で全部食べてしまう。
(きっとソラさんもそうだったんだよね)
「あ!全部食べたな!」
「だっておいしかったんだもん。ごちそうさまでした。またつくってね!」
「そんときも食べてくれるか?」
「もちろんだよ!コックさんがつくってくれるのより、にいさまのごはんのほうがすき!」
笑って言うとサンジは真っ赤になってそれはそれは嬉しそうだった。
いつかジャッジさんに怒られても、それでも料理への愛情を失わない彼への小さな応援になればいい。
(ネズミに食べさせるくらいなら私が食べてあげるよ、お兄ちゃん)