第3章 《1部/前編2/5話/3P》04 05 06
〈子供時代編〉【06 もうすぐ来る時間】
〈02/10話│3(1/2)/3P│1500字〉
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それからしばらくは平和な日々を送れていた。
相変わらずサンジは兄弟達にボコボコにされていたのだけれど、夜には私のこの能力で回復していたから。
(〈治癒能力〉ってホント便利。だけど……)
「あにうえたちのぼうげんもぼうりょくも、とめられなくてごめんなさい……」
実際は何度か割って入ったことはある。だけどそうすると私も一緒に殴られるそれをサンジは良しとしなかったので………[原作通り]に彼が一人でそれらを受けているのが今の現状。
ただ私も殴られたことでの収穫はあった。
私は自分のケガは触っても治せないらしく、治すためには特殊な行程をしないといけないのだが難しいものではなかったので『平気だ』と言っても、サンジはいつも『自分が殴られるよりも痛い』と言う。
「止めなくていい………いや、アイツらに絶対になにもするなよ。お前になにかある方がイヤなんだからな」
「うん…ごめんなさい…」
「ロクジュは悪くないだろ」
「だって……」
(くっ…………)
例え[正義感]や[信条]………[優しさ]なんかを抱いてもここでは全くの無意味なもの。私はそれがひたすらに恐かった。あの日、ソラさんから離れた日に止まらなかった震えの正体はそれに違いない。
家族なのに………異物は認めずに、弱者や思想の違うものを『恥だ』と言いきる人達。
そういう人達と実際に一緒に暮らせば、その息苦しさのなんたることか。見ているだけだったらキャラクターの1人で済んだことも、目の前に[現実]としてあればそうはいかなくなることがほとんど。
平和な時代の日本で暮らしていた私は[暴力]と言うものだって実際には初めて見たのだ。今までは[ドラマ]や[映画]や[漫画]や[小説]の架空のお話や設定でしかなかった物がリアルにある。
対していくら胸や頭を痛ませても、どうにもならない。大抵の人に通じることはない気持ち。それが一番切なくて、悲しくて、恐かった。
(あの人達の[感情]がないのも一部だけってホントに恐い…)