第10章 時田カオル目線に戻って
俺の後悔だらけだった日記は今日で終わり。あの日火事が起きたことは悲しいことだっただろうけど、それで自由になったMOBたちが、今は所有者が誰もいない山の中で「楽園」を作り始めているからだ。
俺も少し手伝いに行っているけれど、キノコ人は思った以上に賢くて手助けなんていらないくらい成長していた。それもこれも、あのサツキさんのおかげなんだろう。
それに、あの家畜トリオのMOBたちもなかなか器用で面白い。時々ケンカはしているけどいつも楽しい時間をくれる。今度は豚さんの方にも毛繕いをしようと思う。
そうだ、そろそろ彼らにも名前をつけてあげないとな。その時はMOB翻訳機を持って行くとしよう。彼らはどんな名前を好むだろうか。今からまた会うのが楽しみだ。
サツキさんも、本当に素敵な人である。あの日、俺はあの山に通っていなかったらきっとずっと会えなかっただろう。笑顔も素敵だし、いつも一生懸命だし……。
「あれ、日記になんてことを書いているんだ……」
俺はペンを置いた。これ以上はまた別の闇歴史を生む予感がしたからだ。恋心……? いやいや、まさかな……。
そうして、俺の物語はゆっくりと始まっていったのだ。
おしまい