第1章 はじまり
俺は時田カオル。あるところの研究所に務める研究員だった。
更に俺は、その研究所の上位研究員として働いていたが、度々怪しい動きやMOBたちへの残酷な行いに倫理観の疑問を持ち密かに調査をしていたところでクビになったヒーローのなり損ないが俺である。
ヒーローのなり損ないがなんの話かって?
……研究所には罪のないMOBたちが沢山いた。彼らには助けが必要だった。だが俺がクビになったあと……その研究所が火事になり、証拠と共に沢山のMOBの命が犠牲となったからだ。
俺は、彼らを助けるべきだったのだ。
せめてもと、人の形に近い姿をしたあるMOBに上位研究室の鍵を預けたが、果たして役に立ったのかは今の俺には何も確認出来ない。ただただあの日のことを後悔に思いながら、近場の森や山に踏み入っては困っているMOBがいたら助けるという、償いにもならない行動を繰り返していた。
バサバサ!
その時、地面から羽ばたきの音が聞こえて不審に思った。この辺りには、地上で暮らす羽のあるMOBなんていないと思ったからだ。
もしかしてどこからか逃げ出したオウムでもいるのだろうか……と茂みを掻き分けた時に発見したのは、予想外のMOBだった。
「……ニワトリ?」
緑色のニワトリが、地上でバタついていたのだ。