第1章 燐—りん—
「もう!!だから、学校じゃそーゆーの駄目だって何度言ったら…………」
知ってる。
わかってる。
誰もいないことも。
誰も見てないことも。
キミが、視界の端に映り込んだことも。
僕も黎も。
知ってるんだよ。
瑠璃。
「え…………」
下から上がって来た瑠璃の腕を引いて口付けて。
黎が、首へと吸い付く。
戸惑いながら狼狽える瑠璃の舌を、口の中へと入れた指先が引っ張り出す。
そのまま、唾液ごと瑠璃の唇へと喰らい付いた。
「んん———ッッ!」
バンバンバンバン僕の胸を叩く両手ごと、黎の右手が後ろから押さえ付けて。
さらには僕から瑠璃の唇までも奪ってく。
「黎」
不服に声を出せば。
瑠璃と口付けしたままに、黎の視線だけが僕を捉えた。
…………ほんとに。
なんて眼で、見るんだろう。
それは。
その視線は本来愛しくて愛しくて、壊してしまうくらいに愛しい、今現在口付けしてる瑠璃に向けられる視線なはずだ。
そんな眼で。
僕を見るな。
「…………だ、から!!お兄ちゃん!!」
「誰も見てない」
「そーゆー問題じゃないの!」
「瑠璃も感じたろ?今の」
「な…………っ、に言って!!」
「ほら、昨日の放課後思い出した?」
「…………燐、黎が意地悪ゆうの」
わーん、て。
泣きながら僕へ泣き付くかわいいかわいい僕らの妹。
「…………ほっといていいよ瑠璃、瑠璃に構って欲しいだけだから黎は」
黎の視線を振り切るように瑠璃の首筋へと顔を埋めて、吸い付く。
小さく声をあげて、当たり前のように目を閉じる瑠璃。
ほらもう。
スイッチ入った。