第1章 1
「き……来てしまった……」
肩から提げたバッグ。
───片手にチケット。
東京から遥かに離れたある街に、やって来てしまった。
和之を追って………なんて言うと大袈裟で恥ずかしいけど………間違ってはいない…かも。
【…言いたいことが、あるの。】
ソロ活動の追加公演で、長く家を空けることになった和之。
彼の愛兎の世話を頼まれ、同時に彼を見送るために訪問した彼の家。
なぜかそこで喧嘩をしてしまい(理由はかなりくだらない)、そのまま喧嘩別れをしてから早くも半月。
最初は本気で怒ってたけど、それは最初の1日だけ。
2日目からは、後悔と寂しさばかりが押し寄せて。
でも、つまらない意地が先に立って、押し慣れた彼のケータイ番号を押して画面に映しては、発信できずにいた。