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【短編集】悪役令嬢RTA

第9章 いぇ~い、王太子殿下見ってる~?


―――目を覚まし、私は久しぶりにノーマルな学園の制服に袖を通す。
普段は服装チェックの日と式典以外は華美に装飾した改造制服を纏っていたが今日は勝負をかけるのだから。

腰にはロザーリオ。
髪はシニヨンにしておく。
―――どこからどう見ても淑女ね。

鞄には『淑女の嗜みセット』を忍ばせる。
そして学園にいつもより早く到着した。
お御堂に行き、椅子に座りロザリオを手繰り祈りを始める。

暫くすると、お御堂の戸が開き誰かが入ってくるのが分かった。
―――ステファン様よ。
いつもこの時間にお御堂の花の水換えをするのは織り込み済みだ。

祈りを捧げる姿に素通りしようとして、だが、それが私と分かって足が止まる。
「ボレリウス伯爵令嬢……」
思わず出てしまったと言った感じの声に私は顔を上げた。

ホロリ、と私は涙を零す。
ステファン様は憎い私にも紳士的だった。
花瓶を足元に置きハンカチを差し出す。

それに泣き縋る私―――。
「今日は随分大人しい恰好ですね」
そして私の隣に腰掛ける。

「……ご存知なんでしょう?」
とうとうプロムは明日。
「ステファン様」
堪らないっといった感じで私は彼に縋った。

「ボレリウス伯爵令嬢だけが悪いとは私は思いません」
なら私に味方しなさいよ。
付き合いだって私との方が長いのに。

「もう、……シルヴィア嬢とは呼んでは頂けないのね」
私の落胆し切った声に、ステファン様が返す。
「……でも、貴女がユーリア嬢を追い詰めたのは間違いない」
苦々しい、といった声に私は又ハンカチに泣き縋る。

「反省しておりますわ」
えぇ、反省しているのは本当。
ハンカチで涙を拭い鞄を漁る。
「だから祈りを?」
ステファン様が問うてきた。
それに頷く私―――。

「貴女の気持ちが聞けて良かった」
ステファン様が明るい声で言う。
そう―――反省はしているわ。

―――陰湿にいじめるなんて手緩かったってね!
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