第8章 番外編・拝啓、サンドラお嬢様
「えぇ、あんなシャバい男と通じず、旦那様と初めての夜を迎えられて、私は天にも昇る気持ちです」
言えば旦那様は体を起こし葉巻をふかしだす。
「そう言えと誰ぞに入れ知恵をされたか?ワシを前にしたらそう言うしかあるまいな。……まあ折角若く美しいのだ、存分に使い倒してやろう。どうせお前も心はここに無いのだろう?」
あんまりな言い分だ。
だけど―――、
きっと旦那様はそんな女達としか寝てこなかったのね。
嗚呼、可哀想な旦那様。
でっぷり太った旦那様が捨てられた子猫に見える。
旦那様の手の葉巻を奪い、その口にキスをした。
「過去の女がいるのを匂わせて……焼けてしまいますわ。この葉巻の様に……」
旦那様の口に葉巻を戻して抱き締める。
「まあ暫くはお前を堪能しよう」
今度は旦那様から口付けてくださった。
愛い、……愛い、旦那様。
どうしたら旦那様の愛を独占出来るのかしら。
いけないわ。これでは『私』と同じ……。
出過ぎない。
出る杭は打たれるのよ。
―――でも、本当に愛しているのよ旦那様。