第8章 番外編・拝啓、サンドラお嬢様
「旦那様!!」
決意も虚しく私は朝から叫ぶ。
旦那様の前には山盛りのたっぷりバターのロールパンにハニーマスタードソースがこれでもかと掛かって申し訳程度に香草が添えてある厚切りハム。
「朝からそんな物を食べて……お野菜をお召し上がりあそばせ!
昼も夜もお肉ばかりで、栄養が偏ってしまいます!」
「何故だ。私の事を気にしてお前に何の得になる?」
「屁理屈はお止めくださいまし。旦那様に長生きして頂きたいからに決まっているでしょう!」
私が言えば旦那様は気まずそうにしている。
「長生きしたって仕方ないだろう」
モゴモゴ言う旦那様の前からステーキの様に厚くてでかいハムを奪う。
「旦那様は良くても私が良くないのです。旦那様にはお孫を抱いて頂きたいのですから」
私の言葉に旦那様がカッと目を見開く。
「お前、身ごもったのか?!」
言われた私は赤くなった。
改めて確認されると恥ずかしい事を言ってしまいましたね。
「『まだ』です。でも必ずや旦那様のお子を宿してみせます。……ですから!」
皿を私の席に置く。
「今から私が旦那様の朝食を作ります。これは私が食べます!私が太く醜くなるか?!旦那様が痩せるか?!どっちが早いか勝負です!」
私は厨房へ駆け込む。
給仕達が『奥様、お止めください』と慌てふためいているが知らない。
昔取った杵柄で料理を作っていく。
―――旦那様に長生きして頂きたいんだから。
それから旦那様のご飯は私が管理する様になる。