第8章 番外編・拝啓、サンドラお嬢様
初夜は―――まあ旦那様はお歳の割に頑張ってくれたのではないかしら?
乙女だった私には比較対象がいないから分からないけれど。
もう『公爵夫人』なのだから早起きする必要も無いのに、職業病が直らない。
目を覚ますと昨晩、唇が腫れてしまいそうな程口を吸い合った旦那様がすごい鼾をかいている。
―――私自身も自覚が無かったが、どうやら私はおじさんにめろつく質らしかった。
『私』の父親は雇用主だし、既婚者だし、顔整いで『おじさん』と言うにはちょっと可哀想な風貌だし他におじさんと言ったら職場仲間で自覚をする機会が無かった。
でも、旦那様を前にした途端、私は自制できない程のぼせ上がってしまったのだ。
多分、原因は父を早くに亡くした事だろう。
父への憧憬が全て旦那様に向いてしまった。
「旦那様」
鼾継続中の旦那様の可愛いお口にキスをする。
すると物語に出てくるお姫様の様に旦那様が目を覚ます。
「起こしてしまってすみません」
言いながら、我慢出来なくて又旦那様にキスをして体を寄せた。
「かまわんよ」
まだ朦朧としている旦那様可愛らし♡
「昨晩は最高の夜でした」
言うと旦那様がこちらを向く。
「若い婚約者がいたというからもう貫通済みだと思ったが処女だったとはな」
初夜明けにしては最低な言葉。
だけど色ボケした私には響かない。