第8章 番外編・拝啓、サンドラお嬢様
「お縄につけ、悪役令嬢」
式が進み、私達は向き合う。
旦那様がウィンナーの様な指で私のベールを上げた。
目の前にはヒキガエルの様に太った頭髪の薄い、―――歳の割には整った顔をした『私』の父に比べたら醜貌の壮年男性。
でもどうして?胸が高鳴るわ。
「赤くなってどうした……初心を気取っているのか」
指が顎にかかる。
赤くなっている?私赤くなっているのね?!
「全てワシのものだサンドラ」
キスをした。
嗚呼、確かに壮年男性だわ。
なのに、私、はしたなく発情してる。
ここが式場でなかったら、私は自分から旦那様を押し倒して口付けしまくっただろう。
『あんな醜い男と口付けするなんて怖気立ちますわ』
『こら、ハンナ、……言って良い事と悪い事があるんだぞ。ふはは』
参列してくださったエリオット様とハンナが言っているのが微かに聞こえる。
―――ふん、好きに言うが良いわ。
早く式終われ、皆早く帰れ!!
私は旦那様に抱き寄せられ、その香水と独特の体臭の混ざった空気を胸いっぱいに吸い込んでいた。