第8章 番外編・拝啓、サンドラお嬢様
―――それからすぐ、私の新しい婚約が決まった。
みっともなく落ちぶれた令嬢を父は逸早く嫁がせたかったのだろう。
細君が早世されたという、(本当に)三十歳上の公爵家の男性。
見合いの席すら用意されず、渡されたのは一枚の絵のみ。
顔を見たのは婚姻式当日という始末だ。
でっぷりとした恰幅の良い頭髪の薄い、言ってしまえば、親程のおじさん。
旦那様は再婚だが、私は初婚、それも若いと来てる―――。
華やかなお式を用意してくれた。
ドレスだって、あの日―――私が落陽したあの日の十倍は豪奢な物だ。
招待客の中には私と同じ罰を受けるべき令嬢達もいたが、みんな一様に笑っている。
良い意味でじゃない。勿論嘲笑だ。
「札付きのじゃじゃ馬が、年貢の納め時だ。
嫌か?泣け叫び、父に取り縋って詫びるか?」
隣に立った旦那様が言う。
泣け叫ぶ?
叫ばないが?
私の主人が二人になるだけだ。
そして私は織り込み済みで此処に居る。