第8章 番外編・拝啓、サンドラお嬢様
―――最初は何が原因だったのかしらね?
当事者では無い私には推測する事しかできないけれど、ただの『嫉妬』だったんじゃないかしら。
自分の出来ない事をやってしまった彼女に痺れる憧れるゥ!!……でも、逆立ちしても真似なんか出来ない己への苛立ち。
きっとそんなモノよね。
それが苛烈な責め苦になってしまい―――。
それが明るみに出てしまった。
全部が彼女―――『サンドラ・ティッキネン』の責ではない。
この場にいる何人かも関わっている。
だけど、『私』はそれを否定しなかった。
『私』、『サンドラ・ティッキネン』なら、そうするだろう。
「サンドラ、いや、ティッキネン子爵令嬢……婚約は解消だ。非道な行いをした君を私は許す事が出来ない」
ラルセン公爵家の紋章の色、白銀のドレスを纏った『ハンナ・アンドレアン』がエリオット様の腕に侍り、華美なレースの扇の向こうで優美に笑っている。