第7章 とりかへばや物語り
「明日はお誕生会なのにまだお床につかないのですか?」
私が直々に指導しただけあって、一切訛りの無い公用語を操るヨンナ。
「ヨンナ……お前、もしお金持ちだけど歳が三十は違う様な壮年男性に嫁げって言われたらどうする?」
―――私の問いかけにヨンナは即答する。
「有難く受けます」
はあとため息が出る。
「三十よ?三十!」
「お嬢様はお嫌かもしれませんが私にしてみれば身分の下克上のチャンスですから」
ヨンナの澄んだ瞳に羨ましいという気持ちすら浮かぶ。
………………待てよ。
ヨンナはラベンダーブロンドをオカッパにして居るが、瞳は私と同じ翠だ。
そして、髪は実はウィッグで本当は私と同じ濃い色のブロンド。
ヨンナとは街のカフェで出会ったのだが、私が市井に出て遊んでいるなる真しやかな噂が流れていた。
何故?と思って出掛けた私は運命的に彼女と行き会ったのだ。
私の様に身形を整えていなくてもパッと見分からない位に二人は似ている。
家に連れ帰り、髪や肌を整えると、もう私と見紛うばかりに仕上がった。
以来、何か有事には……と私付きのメイドにしたが、そのままだとややこしいので普段はウィッグを被せている。
ここ数年で私の影武者になれる様、貴族教育もした。