第6章 断罪イベントは蜜の味
そしてやって来ましたフィリップ王太子殿下の開催するパーティー当日。
私は王太子殿下の瞳と同じ青いドレスを纏う。
もしも何も無いならそれに越したことはない。
でもそんな風には終わらないだろう。
フィリップ王太子殿下の心は今や私から完全に離れている。
それが悲しいと思う時期は過ぎてしまった。
それでも名ばかりの許嫁の地位に縋っていた。
―――それも今日でおしまい。
『フィリップ王太子殿下がお迎えに参りました』
侍女長が呼びに来たので外に停めてある馬車に乗る。
もう手すら差し伸べてくれない殿下がまだ好きだ。
「殿下、ごきげんよう」
挨拶をしても頷くばかりで挨拶すら返してくれない。
腸が煮えくり返るが我慢した。
可哀想な気弱いヴェロニカ。お前ら全員、ヴェロニカをうんつくにした罪で地獄へ落としちゃるけんね。
馬車は走り出す―――地獄の一丁目に向けて。
そしてパーティー会場、一応殿下は私の手を取り入場だけはしてくれる。
湧き上がる皆からの歓声、そして殿下は行動に出た。
ハラリと私の腕を払い彼女の隣へ行く―――エメリ・レーヴェンヒェルムの隣に。
彼女は当然の様に殿下の腕を取る。
「ヴェロニカ、いや、カッセル公爵令嬢、度重なる悪事、」
「お話ならばこちらから致しますわ、フィリップ王太子殿下」
断罪イベントなんか始めさせてやるもんですか!!