第5章 あの子は太陽の小悪魔エンジェル
どうせここには私を知っている人なんかいないし。
エドヴァルドの出番が終わると彼のテーブルに行く。
「何をお飲みになるの?奢らせて頂くわ」
「良いのかい。君みたいなお嬢さんがこんな所にいて」
「あら、じゃあ守ってくださいまし」
届いたエールと私のジュースで乾杯する。
「お名前はなんというの?……あなたの歌にメロディー、聞き惚れてしまいましたわぁ。今まで聞いたオペレッタなんかより全然有意義な時間が過ごせたと思います。流石歌で稼いでいるだけありますわ。本当に、まだ耳の中にあなたの歌が響いている様……」
実際エドヴァルドは流しで飯を食ってるだけあって上手いのだが、大袈裟に褒めちぎった。
「……エドヴァルドだ。お嬢さん、それは褒め過ぎじゃないか?」
気恥ずかしそうなエドヴァルド。
うんうん、好感度上がってる。
「私ね、あなたが先日街中で演奏しているのを聞いて又聞きたくてここに来ましたのよ」
これは嘘であって嘘ではない。
物語の途中、街に行くとエドヴァルドが背景で演奏をしていて、BGMもそれに変わる、のを私は知っているんだから。
エドヴァルドは更に恥じ入った様に帽子を目深に被った。
「よせやい、こんなおじさんを褒めて何になるんだ」
―――ソフィーアから離れる為よ!