第13章 天翔る悪役令嬢
―――そこから何刻経っただろう。
バチバチと紫電が弾け、けたたましい音と共に掻き消える。
「反応消失。対象の入定を感知。
……私達の勝利だよ、ティ」
はあはあと息が上がった。
機体から上がるエンジン音と私の心音、どちらが煩いかしら?
レバーを握った手はもう感覚がない。
冷たい汗が背中を伝い、身体中が熱気で包まれている。
「ユリ、私達やったの?」
「そうだよ、ティ」
私の後ろに座ったユーリウス様が私を抱いた。
体を包む熱さとは別の、人の体温が妙に心地良い。
ボタンを押しオートパイロットにして私はレバーから手を離し、それをゆっくりにぎにぎしてみる。
―――やったのね。私やったんだわ。
実感するとボロボロ涙が零れた。
ソラバミの攻撃で地表に叩きつけられ装甲が割られた時等、もうだめかもしれない……ナンテ弱気になったけど、後ろからユーリウス様がずっと励ましてくれたから私は強くなれたのだ。
「ありがとう、ユリ」
ユーリウス様が私の涙を指で拭う。
私達は立ち上がり自然に抱き合った。
恋情は無い、互いに戦の勝利を称える抱擁。
「君の実力さ、ティ」
体を離し、今度はコツンとグーにした手を打ち合う。
「さて、行きますか、ユリ?」
「そうだね、ティ」
私達はプラグの中に座り直しオートパイロットを切る。
そして飛んでいくのは―――、