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ロドスの日常[方舟]

第23章 あらぬ疑い


「どうしやすか、ムースさん」
「ム、ムースは……」ムースさんはやっぱり声が震えていた。「ひ、昼寝するつもりじゃないですからね! ソーンズさんがドクターに変なことしないように、み、見張るだけですから……!」
「好きにしたらいい」
 そんなことはどうでもいい、と言うかのように目の奥から全く動揺していないソーンズさんは、そのまま自分が座っていた方のソファに腰を下ろした。そして何か雑誌みたいなのを読み始めた。全く読めない男だ。
 ムースさんはというと、戸惑いながらも大将の避けた足側の方へゆっくりと座っていった。ソーンズさんがいるからか、それとも俺がいるからかムースさんは緊張した顔はしていた。
 にしてもソーンズさんに雑に足を動かされたというのに大将は全く起きない。ソーンズさんの読んでいる雑誌は、科学系の何かみたいだった。……そういえばこの人、薬学研究者だったっけ。
「ソーンズさん、まさか大将に……」
 俺は最後まで言わなかった。だがソーンズさんは俺の方を見据えて、淡々と言い放ったのだ。
「四徹夜もすると作業効率が下がるからな」
 それは俺の言いかけた質問にYESと答えたようなものだった。そうなのか。俺はよく分からねーが理解はした。ソーンズさん、大将に眠らせる薬かなんかを飲ませたんだ。
「……飯作ったらまた来やす。嫌いなものはあるっすか」
 そろそろ飯を作らないといけなさそうなので俺は食堂に戻らなきゃならなかった。だが、今後のこの人たちの行く末が気になり、また戻ってくる理由をつけたかったのだ。
「食えればなんでもいい」
 ソーンズさんはそう答え、
「ムースも、ジェイさんのお料理ならなんでも食べたいです!」
 とムースさんも答えた。ムースさんの緊張が少し解れたのか、ここでようやく笑顔を見せてくれた。
「分かりやした。じゃ、すぐ作って来やす」
 そう言って俺は大将の執務室をあとにしたんだが、その後三人がどうなったのか俺はずっと気がかりだった。やっぱ大将が手足縛られていたのも意味深だったのでは、とさえ思い始める。……とにかく、今日はさっさと飯を作ってもう一回様子を見に行くしかねーな。
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