第23章 あらぬ疑い
「う、嘘です! ドクターがそんなこと言うはずありません!」とムースさんは震えながらもソーンズさんに言った。「だって、手とか縛ったら、起きた時困るじゃないですか……!」
「ムースさん……」
そんな言い方したらさすがにソーンズさんも怒るのでは。俺はムースさんを止めようとしたが、ソーンズさんの顔は特段変わることはなかった。
「俺の言葉が嘘だと思うなら、あとでドクターに聞いてみるといい」とソーンズさんの声は冷静だった。「それと、ドクターは今、三徹夜目でようやく寝たところだ。大声出したら起きるぞ」
「ふぁ……」
ソーンズさんの圧に負けたのか、徹夜しがちの大将を気遣ったのか、ムースさんは変な声を出して口を閉じた。大将はぐっすり眠っている。
もうこれ以上ソーンズさんが語ることもなさそうだし、一旦戻りましょうと俺はムースさんに声を掛けようとして、ソーンズさんがこんなことを言い出したのだ。