第11章 背負ったもの
翌日。
私は端末を通してアレーンに今日から秘書になるよう伝えたが、そろそろ来る時間に彼の姿は現れなかった。
もしかして逃げられたのかな……と不安に思っていると、執務室の扉がノックもせずに開いて私はギョッとした。
「ねぇセンセー、この人たちを新技の実験に使ってもいい?」
「ひっ……」
入ってきたのはアレーンだったが、その手には捕虜捕獲機が握られていた。捕獲されているのは昨日アレーンが敵殲滅作戦にいた敵の捕虜だろうと思われた。アレーンの一言一言に、捕虜は怯えているようだ。
「何してるんだ、アレーン!」私はすぐに駆けつけた。「今すぐやめるんだ。とりあえず医務室に連れて行って……」
捕虜たちは怪我をしたままだった。どこからどうやって連れて来たのか、私には分からない。
「ええ、ダメってこと? じゃあ今回はやめとくよ……」
「今後もずっとダメだ」
「今後も……? なんで」
アレーンの表情は相変わらず凹凸がない。彼は若いし、学ぶ点はまだ多くあるのだろう。まずは敵とはいえ戦意のない者に手出しするのは辞めさせなくては。
「とりあえず、医務室に連れて行こう。秘書の仕事はまたあとで指示するから」
「はいはい、分かったよ、センセー」
彼の教育は、まだまだ道のりが長そうだ。
おしまい