第8章 オシャレな君に
「どお? ドクター」
少しして試着室から出てきたレオンハルトは、かなりカジュアルな格好をしていた。全体的にぼんやりとした緑の衣装にところどころ青が差し色として入るだけで彼の爽やかさをより際立たせ、袖や靴のデザインがハイカラさを演出している。つまり、スマートな衣装だったのだ。
「ドクター、何も言ってくれないと似合うかどうか分かんないよ?」
とレオンハルトが言う。私はなんとか言葉を絞った。
「カッコイイ……」
それしか出てこなかった。他にも色々浮かんだ言葉はあったはずだが、レオンハルトの明るい声に何もかもが崩れ去った。
だがレオンハルトはニヤリと笑って満足そうだった。元々彼はオシャレなオペレーターだ。自分が着せ替え人形になることは苦ではないみたいである。
「じゃあもう一つも着てみるね」
「え、もう一つあるの??」
私が驚いている間に、レオンハルトはまた試着室へ入って行った。どういう衣装なのだろうか。
「こっちは? どお?」
そうしてレオンハルトがもう一つ着替えたものに、私はうっかり見蕩れて言葉を失った。私は、気付けば財布の紐を緩めており、レオンハルトにその衣装をプレゼントした。レオンハルトもすっかりその衣装を気に入ってくれたみたいで、私が秘書に彼を選ぶ度にその衣装に着替えてくれた。
「嬉しいんだけど、夏になったらさすがに違う服にしてくれよ……?」
「それは、ドクターが夏服を買ってくれたら考えてあげるよ♪」
私にウインクをするレオンハルト。彼は自分がカッコイイことを知っているし、オシャレなレオンハルトが好きな私のことも知っているのだろう。私はまた、自分の財布と相談することになるだろうが、いつも戦場に出てくれるオペレーターへの感謝を伝えられるなら、これでもいいかもしれない。
これが、私がオペレーターに衣装をプレゼントするのが好きになった理由である。
おしまい