第7章 あなたの宝石
とはいえ、ディアマンテは鉱石病のせいで目がやや悪く、眉間に皺を寄せるのは一度二度だけではなかった。彼の作業を見る度に鉱石病のことがより恨めしくなる。
さて、終わりましたよ、とディアマンテが手を止めるまでが私が彼の正面に座っている理由になっていたが今回は違った。
「さて、出来ましたよ」
「え」
ディアマンテの手中には真っ赤な宝石があった。丁度それは、ディアマンテの紅の瞳に近いようなものだった。私がその宝石に見蕩れていると、ディアマンテが腕を伸ばしてきた。
「さぁ、これをあなたに差し上げましょう」
とディアマンテは言ったが、私は受け取るのを少し躊躇った。なぜなら彼がディアマンテだからだ。かつてある場所で「怪盗」だったとする彼の手にある宝石が、本当に盗品ではないのかどうなのか、私には分からないからだ。少なくとも、記憶喪失の私には。
ただ、ディアマンテもそんな私の心境を読み取れない程鈍感ではなかった。ディアマンテの、まるで朗読を聞かせるような口調と声で彼はこう言い切った。
「ご安心下さい。これは盗品でもなんでもありませんよ」
不審に思うならば、他の宝石鑑定士に聞いてもいいとディアマンテは言うので、私は彼の言葉を信じて宝石を受け取った。
私の手に転がり込んできた宝石はディアマンテの手にあったばかりだったかまだ温かく、光に当てるとその赤い透明が私の瞳に焼きついた。指輪の装飾にするには少し大きいが、ネックレスに繋げるなら丁度良さそうだ。
だけど何か、物足りない気がして私は宝石をじっと見つめた。