第7章 あなたの宝石
ガッガッガッ……。
ロドスの宿舎に来ると、そこでは黒いハット帽を被ったある人物が、テーブルの一角で研磨作業をしている様子が見えた。
「ディアマンテ」
私が声を掛けると、黒いハット帽の人物がこちらを見上げる。片眼鏡の先に見えるその瞳は鉱石病によってやや濁りを見せていた。
「おや、ドクターでしたか。今日も正面に座りますか?」
ディアマンテの見せる笑顔が果たして本音なのか偽善なのか、長くその職をしてきたのだろう彼から心境を読み取るのは私でも難しい。ただ、ディアマンテの研磨作業を眺めるのは私は好きだった。私は頷いた。
「失礼するよ」
「どうぞ、お好きに」
私とディアマンテの会話はいつもそれだけだった。ただ私は、ディアマンテが研磨作業をしているのをボーッと眺める。ディアマンテは手作業で宝石を研磨していた。
前に、研磨作業の機械を仕入れようか、という話になったが、それは彼に断られてしまった。彼は宝石を宝石として使う訳ではないからだ。それに、他に研磨作業を望むオペレーターもいなかったから、あまり需要ないものは置くなとケルシーに怒られたのは今でも覚えている()