第6章 黒天使の顔
それから何時間かしたあと、私が目を覚ますと、向かいのソファに今日の秘書であるイースチナが読書をしていて、その隣にアレーンが座ってこちらを眺めていた。
この光景はよくあることだった。イースチナは読書が出来るところならどこでも良かったし、隣に誰かいようと気にしない。そしてアレーンは用がなくても執務室に来て、運び込まれた書類を覗き込んだり私の手癖の落書きを眺めてどこかに行く。ただ、作業を手伝ってくれないのは少し気にはなるが、邪魔にもならないからアレーンの自由奔放さを許してはいた。
「おはよう、アレーン。いつからそこに?」
「結構前からいたけど?」
おはようの時間ではないのは充分理解しているが、何か声を掛けたくて私がそう聞くとアレーンから即答を貰う。私は隣のイースチナを見やったが、読書に集中していてまるで自分のことは気にしなくていいと言っているかのようだった。
「寝ている私から学べるものはないと思っていたが……」
私はソファから体を起こした。その間もアレーンから熱心に見つめられている。もしかして私、寝言でも言っていたのか……?