第3章 レッドの寝顔
ロドスでの事務仕事は、山のようにある。
しかし、記憶喪失前の私は相当優秀だったのだろう。私はほぼ意識をしなくても速読が出来、記憶喪失だったとは思えない程しっかりとした字の読み書きが出来る。その辺りには、記憶喪失とまだ謎の脳の絡繰があるのだと思う。なぜ私が、記憶喪失だったにも関わらず文字の読み書きが出来るのか、それは、ここで私が戦場の指揮をしているのと同じくらい、謎に包まれたことだ。
そうして書類作業も一段落したところで、イースチナに執務室の留守を頼み廊下に出る。事務作業慣れしているとはいえ、根を詰めるのは良くないと、ロドス艦内を散策することにしたのだ。
最初来た時は驚いたものだ。この大きな建物が移動する艦であること、ここにある沢山のハイテクノロジーな技術のことなどなど。
「あ、ドクター、こんにちは」
「ああ、ススーロ、お疲れ様」
そして私が艦内で一人歩いただけで、すれ違うオペレーターたちほとんどが、尊敬や敬愛の眼差しで向けてきたことにも驚いたものだ。私はそこまで偉い人物なのか。自覚が出来ないことがあるとこんなにも違和感があるのかと思ったものだ。
私はなんとなく、休憩室に向かった。私はここで各々休んでいたり歓談を楽しんでいたりするオペレーターたちとコミュニケーションを取るのが好きだ。今日もそれなりに賑やかな様子の中、ソファの上にある赤い何かに目がついた。