第2章 トイレ掃除
「トイレというものは、健康衛生上にも大事なところだろう? そこが汚れていたら治るものも治らなくなると思っていてな、出来るだけトイレ掃除は集中的にやった方がいいだろうという私の見解で……」
私は背筋を伸ばし、この言葉に嘘偽りはないのだと伝えたくてアーミヤの目を見たが、彼女は厳しい目付きをしたのち、顔の筋肉を緩めて微笑んだ。
「やっぱり、ドクターはドクターです。私や、ロドスの皆からしても」
それが、どういう言葉なのか深いところまでは分からない。だが私は、頷いて。
「ありがとう、アーミヤ。私も、ドクターであるように努めるよ」
と私はアーミヤの手にあるデッキブラシを取ろうとしたが、それは返してはくれなかった。
「これは私がやります。ドクターは、ドクターにしか出来ないことをやって下さいね?」
しかし……と私が言いかけた時、女子トイレの出入口に誰かがやって来た。今日の秘書であるイースチナである。
「ドクター、公開求人の結果が出ました。ご確認をお願いします」
「ああ、もうそんな時間だったか、今行くよ」
私はアーミヤからデッキブラシを取り戻すのは諦めて女子トイレをあとにした。背中でアーミヤの視線を感じたが、気にしないことにした。
記憶喪失の私が、ロドスで何気ない日々を過ごす物語。また記憶を失わないために、ここに日記を残して置こうと思う。
つづく……。