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ロドスの日常[方舟]

第28章 ケルシーとロベルタと顔マッサージ


「実はさ、前に部屋の窓を歪めちゃったことがあって」とロベルタが話し始める。「それでケルシー先生に怒られちゃって。私ふざけて、そんなに怒ってたら顔の筋肉が凝っちゃうよ! って言ったんだよね」
「そんなこと言ったのかい?」
 私はロベルタの胆力に驚き、関心したが、ケルシーの怒った顔が簡単に想像出来た。
「そ。その時はめちゃくちゃ怒られたんだけどさ」とロベルタは言う。「代わりに顔のマッサージしてあげるよって半分強引にやってみたら、案外大人しくなっちゃってさ。勢いのままマッサージしてみたら凝ってて凝ってて。ちょっと心配になったから時間ある日に顔マッサージしに行ってたら、定期的にやるようになったんだよね〜」
「すごいね、ロベルタ……」
 でしょ、と得意げに笑うロベルタだったが、私は彼女の強かさに(反抗だけはしないで置こう……)と思うのであった。
「あ、そうだ。いつも顔マッサージされてばかりじゃ悪いから、私からも何かお礼をしていいかな」
 顔マッサージも終わり、私は上体を起こしてロベルタと向かい合う。
「えー、いいよ、そんなもの。マッサージだって私が好きでやってるだけだし……」
「ありがとう、ロベルタ」
「へっ」
 頭を撫でる時は素早くさり気なく、というのを心掛けてロベルタの頭に手を差し伸ばした私。ロベルタから変な声が出ていた。私は急いで手を引っ込めた。
「ごめん、急に。サリアからそうしたらいいって聞いて……」
 と私はすぐに謝ったが。
「う、ううん! むしろ嬉しいというかなんというか……」ロベルタはなぜか慌てていた。「じゃ、じゃあもう帰るね!」
「ああ、また……」
 ロベルタはパタパタと小走りに執務室を出て行った。やはり女性の頭を撫でるというお礼は思い切りが良過ぎたかな……と思いながら、私はロベルタの顔が思ったより可愛かったことが印象的だった。
「……さすがに、お礼の方法変えるか」
 私は一人呟いて思考を巡らせた。

 おしまい
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