第8章 『いっぷ』ではない事3
「君がそういうのが嫌なら、僕がいくらでも貸してあげるし」
―――聞いた事ない?裏ゲーム、って。
本来、当然禁止されているが、『ルチア』を『円』に換金して勝負する事。
一年生の間では上層になるとそんな遊びをしているとまことしやかに囁かれているだけだが。
「僕、これでも結構稼いでるからさ」
アルタ先輩が私の髪をなでた。
「美希さんが二年になったら『人生権利書』を買いたい奴はいるんじゃないかなあ」
髪を指ですいてアルタ先輩は言う。
「そうでしょうか?」
言えば、アルタ先輩はキスしてくる。
「早く債務整理しよう。いつでも『ペアリング』してあげるから」
―――ペアリング。
学園生用の時計をリンクさせて、親側の資産を使ったり
出来る機能だ。
「ありがとうございます」
今はお礼だけ言う。
「そろそろ行かなきゃ」
アルタ先輩は体を起こして服を着出す。
それを手伝い、寮の入口まで送る―――。
今日はヤリ部屋に行っていないのに、ほどよく疲れている。
―――さ、夕食を食べよう!
私は食堂に向かった。