第19章 Iris out.
「真人、何て書いたか分かりますか?」
明るく聞いてみた。
真人が体を起こす。
「天原」
名前を呼ばれて抱き締められる。
そのまま動かない。
「君はどうしたら捕まえられるの?」
その問いかけに対する答えを私は持っていない。
でも分かる。私は『ちゃんと』答えなければ真人を失う。
―――それは嫌。
真人は私にとって大切な日常の一つなのだ。
「今だって捕まえているじゃないですか」
優しく答えて真人の頭を撫でた。
真人は大好きな幼なじみ。
ずっと側にいてくれた人。
「そうじゃなくてさ」
真人はまだ食い下がる。
分かってる。私の『真』がほしいのよね。
きっと。
でもそれはまだ、私にも分からない。
御厨お姉様が好き、馨が好き、アルタ先輩が好き、真人が、好き。
みんな好きなの。ズルいけどみんな好き。
「真人」
言葉を封じる様に唇を合わせた。
「ねぇ、だめ?」
甘えた声を上げる。