第19章 Iris out.
それぞれの部屋で夜着を纏い、私がお水を飲みにキッチンへ行き帰ってくると有沙はおらず、私のベッドに真人が寝転んでいる。
「どうしたの?」
笑いを堪えながら問う。
「御厨さんに追い出された」
想像して笑いがこぼれてしまった。
「笑い事じゃないよ」
真人がため息をつく。
私もベッドに腰かける。
「じゃあ、今美宇さんがしてる事、する?」
問いかけてみれば真人は目を見開いた。
そのまま気まずそうに私に背を向ける。
「そういう冗談、誰にでも言うの」
拗ねた様な声に何だか面白くなってしまう。
夜はまだ長いのだから。
真人の背に指をすべらせた。
指先で『すき』と書いてみる。
真人がピクリと動く。
分かったかしら?分からないかしら?
私には分からない。
真人の『好き』は、『守りたい』は分からない。
でも、出来るなら応えてあげたい。