第16章 N氏の話を信じるな。
―――そして時間は夜半。
本当に裸にした那由太を胸に乗せて眠りについた成部は安らかな寝息を立てている。
すっかり彼が寝入った頃、『彼女』からの連絡があった。
チャットアプリの通話要請。
それを受ければ弾んだ彼女の声が聞こえる。
『首尾よくいったかぁ?』
今日の一連の流れは彼女の指示によるものだった。
『多分、奴さんは海水浴場に行きたいとか言う。
でもあの面だからなぁ。男二人だろ、ナンパされて不機嫌になる。だから、言うこと聞いてご機嫌とるんだし。そしたら夜にはお前の望み通りになるぞ』
彼女の彼の事を何でも知っているという口ぶりには思う所はあったが、それより成部への想いを遂げたいという気持ちが勝ってしまったのだ。
あの日、―――彼女、成部の婚約者から連絡があった。
『あーし、ダーの事は嫌いじゃないけど、そういう目では見られないんだよ。ダーとは『白い結婚』でいたい。あーしには好きな人がいるし』
―――だから、と。
いつかチャンスがあれば那由太に想いを遂げさせてやると、成部と番えと。