第15章 誘惑ナイトプール
「馨……」
私は離された手を又掴む。
黙って口付けた。馨が舌を伸ばしてきたから、吸って舐めて噛んで、口を吸い合う。
―――ツゥ、と私達の離れた口の間で唾液が伸びて切れる。
「あ、お前等何してるし!」
馨の手を離す。そして一瞬、視線が絡む。
「ごめん、お腹痛くて、天原さんがさすってくれてたんです」
馨は私をかばってくれた。
「全く、馨ち、嘘下手だな」
千波様は豪胆だ。
馨の嘘を看破した事を伝えてしまうんだから。
「え、あー?」
馨は千波様の方に行く。
チラッと私を見て。
「どこさすってもらってたんだかなぁ?」
あくまで冗談、という語調で千波様は言うんだから馨が困っている。
肘で馨をつつく千波様。それを波多野様が見ていた。
―――夢見る様な眼で。
ちょっとだけ私達の視線が繋がった気がする。
気がしただけだが。
でも分かった。
私は笑っていた。腹を抱えて笑う。
突然笑いだした私に千波様が引いてる。