【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第4章 後宮の外に毒の華が咲く④
月娘は椅子から立ち上がると、僑香と一緒に執務室を出ようとした。
「……志願書だけお願いします。」
決してあの侍女だけは許さない。
そんな月娘の横顔に壬氏は頷いた。
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防家の少し離れた寺に、月娘は小閔の遺体を埋葬した。
喪服姿で小閔の墓の前に立っているのは、月娘と僑香だけだった。
僑香はずっと泣いているが、やはり月娘の目には涙が見えなかった。
「……しばらく侍女は補充しないから、僑香1人で頑張ってね……。」
高級官位の1人娘の侍女は2人でも少ないが、月娘はもうなるべく自分の側に人を置きたく無かった。
「……私1人で大丈夫です……。」
僑香も何かを決意してくれた様に力強く言ってくれたので。
月娘はその顔を見て、少しだけ目を細めて笑みを浮かべた。
月娘は空を見上げて、自分の為に死んでいった小さな女の子を思い返していた。
(小閔、貴方は最後に私にどんな恨み言を残したのかしら。)
それがどんな言葉だろうと、最後に彼女の声を聞きたかった。
そんな事を思って月娘はゆっくりと目を瞑った。