【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第4章 後宮の外に毒の華が咲く④
「…あの子は、私を恨んで死んでいったと思います。」
俯いている月娘の顔を見てもその目に涙は無かった。
しかし、淡々とそう言葉にしていても、月娘の表情に悲しみが籠っている事に壬氏は気が付いた。
『私が思うに、今回の事件では月娘様は本当に無実ですよ。』
猫猫が言った言葉を壬氏は思い出した。
一体何が、こんなに彼女を辛い目に合わせているのだろうか。
月娘の事はなんでも知っている気がしていた。
壬氏の事を好いていてくれて、皇室に入る為に苦労させた事も知っている。
全て壬氏の為に生きてきた月娘を、最初に拒んだのは壬氏だった。
だから彼女がその後に反発する様に問題を起こしても、自分が悪いのだと庇ってきた。
せめてこれ以上月娘が傷付かない様に、壬氏はずっと月娘を気にしていた。
だけど今は、自分の知らない何かが月娘を苦しめている様に見える。
それが何か知りたかったが、俯いている月娘が、その事を壬氏に話そうとしていないのは分かった。