【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第3章 【R指定】後宮の外に毒の華が咲く③
(…ああ…あの時の匂いだ……。)
月娘を寝所に押し込めると、覆い被さる様にキスをした。
月娘の匂いに頭がクラクラしながら、壬氏は当時の事を思い返した。
月娘はあの時の壬氏は、月娘から逃げ回っていたと言う。
(逃げ回っていたさ。全力で。)
月娘は知らないのだ。
あの後に壬氏の身体がどうなったのか。
壬氏は3日間自分の宮に閉じこもり、後宮に行けなかった。
月娘の事を思い出せば、体が熱くなり、勝手に下半身が反応する。
あの時ほど、高順と同じ薬を飲もうとした事は無い。
鮮明に月娘を抱いた記憶がある内は、寝所から出る事も出来なかった。
月娘に会ってしまえば、元も子もなくなるので、必死になって月娘に会わない様にしていた。
(月娘の体は毒だった…。)
甘い匂いで自分を誘って来て逃さない。
中毒性のある毒の様に、決してその翠緑の瞳から目を離す事が出来ない。
まさに美しい毒の華だった。