【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第3章 【R指定】後宮の外に毒の華が咲く③
だからもう。
皇室に入るなんて夢物語は諦めて。
薬店に嫁ぐ位が丁度良い。
そしたら生家の業も。彼への気持ちも全て。
全て捨てて。ただ目を瞑って生きていきたい。
だけど貴方は、目を瞑っても眩しいくらいに、いつも私の前に現れる。
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久しぶりに訪れる瑞月の宮。
玉座に座る彼を目にして、下座に座る本当の自分達の立ち位置。
軽く頭を下げ、挨拶をするのは月娘の方だ。
「枋家が挨拶に参りました。」
呼び付けられても、腰を折るのは月娘の方だ。
部屋の中には瑞月と月娘しか居なく。
部屋の外には気配はしないが、護衛が潜んでいる事は分かった。
「月娘。」
瑞月はすぐに玉座から降りて月娘に近寄った。
月娘はもう分かっている。
この宮で会う時は、他人のフリなどしない、瑞月と月娘として会うのだ。
グッと壬氏の手が、月娘の両腕に食い込んだ。