【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第3章 【R指定】後宮の外に毒の華が咲く③
「……はっ……皇命ね……。」
月娘は皇弟の印が押された文をヒラヒラと靡かせ、膝をつきながらそう笑った。
「コレ。燃やしちゃダメかしら。」
「ダメです!!皇室侮辱罪で死罪になります!!」
壬氏の文を火鉢に近付ける月娘を、僑香は必死に腕に掴みついた。
「壬……瑞月様が月娘様に送った文です。」
僑香は幼い頃から月娘に仕えていた。
幼い頃から一緒に街に出て、月娘から瑞月の話を聞いていた、たった1人の侍女だった。
だから13歳の時に、月娘がどれだけ悲しんだかも知っている。
そして今も尚。
後宮に行くのは壬氏の為だと言う事も。
夢物語だと分かっていても。
月娘が壬氏の側で正室になる事を心から望んでいた。
そんな僑香のウルウルの目線に、上げていた腕を下ろして巻物をテーブルの上にちゃんと置いた。
(私の輿入れに動揺したのかしら……。)
こんな風に皇命で呼び出されるのは『あの時』以来だった。