【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第15章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑥
それは何度も聞いた壬氏の言葉だ。
月娘はその言葉を聞くたびに、壬氏と自分の心の距離を感じていた。
「……瑞……。私はそれでもあの時貴方の花嫁になりたかった。」
壬氏が月娘だけを花嫁にしたいと願った時。
月娘もまた彼の花嫁になりたいと願っていた。
「側室でもなんでも…。私は瑞の唯一の女人になりたかった。」
「だからそれは、側室じゃ無い!!」
何故分かってくれないのか。
お互い同じ事を思っただろう。
月娘の腕を両手で掴んだ。
そして見合ったお互いの目は逸らす事なく、真っ直ぐお互いの目を見ている。
だけどその目はお互いに自分の意思だけを伝えていて、お互いの心に寄り添う気持ちは見られない。
そんな壬氏と自分の気持ちの溝の深さを感じて、月娘が諦めるのは簡単だった。
「……私はもう…瑞を待てない……待つつもりも無い。」
もうすれ違った気持ちを元に戻す算段など月娘には浮かばなかった。