【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
月娘はその下女を見つけると、その髪を鷲掴みしてそのまま引きずって下女を池に投げ込んだ。
そんな騒動を止めようと、壬氏は現場に走った。
その時に壬氏が見たのは、溺れている下女をさらに溺れせようとしている月娘の姿だった。
壬氏はその月娘の姿を見て、すぐに月娘に駆け寄った。
そして溺れている下女なんて見る事も無く、月娘の手を握った。
下女を叩いて、髪を鷲掴みした月娘の手は赤く腫れていた。
その手を壬氏は大切に自分の両手で包んだ。
「月娘。お前はこんな事をしなくていい。お前の体に傷が付くのは俺が許せない。」
そう言って月娘の手に唇を落とす壬氏を見つめる月娘の顔は、見た事も無いほど無表情だった。
そして何の感情も表さず、月娘は壬氏の手を払った。
「……『壬氏』。下女が溺れ死ぬわよ。」
壬氏は月娘の言葉を聞いて、初めて下女が池に沈んでいる事に気がついた。
壬氏の指示を受けなくても、他の官僚がその下女を助けた。
月娘はまたその光景にすら、眉1つ動かさない。