【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
高順は焦った。
そんな風に官僚に乱暴に接する壬氏を初めて見たからだ。
壬氏は皇弟としての地位は、病弱という理由で皇太子時代よりも政には出ていなかった。
その為、女官見習いはすでに居なく、壬氏に嫁ごうとする家門は枋家が有力だった。
やっと…。
長い年月をかけてここまでしたのだ。
その間の苦悩も、月娘に思い通りに会えない苦痛も十分に受けていた。
なのに今更枋家から出てきたのが、婚約解消だなんて許せるはずが無かった。
「……月娘を中央宮に呼べ。」
皇弟としての面会を得ていた枋太師は、ぎゅっと目を顰めた。
これが皇命だと言う事を十分に理解していた。
しかし、この時枋太師は自身の行いを悔やんでいる最中だった。
月娘を皇太子の婚約者として立派に育てようと思っていた。
それはこの国を想っての事ではなくて。
幼い頃の2人を知っていたからだ。
壬氏がどんなに。月娘がどんなに。
お互いを思い合っていたかを枋太師は知っていた。
幼い2人の甘くも無謀な恋心をずっと見てきていた。